西から東へ横断ドライブ
ロックダウンまで24時間を切ったこの日は、朝から移動です。
僕らをかくまってくれるBさんの自宅までは車で約5時間、島の西から東まで横断することになります。
モタモタしていられないので、ササっと朝食を済ませて9時過ぎに出発しました。
緊急速報が発動された。
“今日泊まる場所に、これから最低4週間滞在しなれけばならない” pic.twitter.com/hYHsWO2WXJ— Yusuke Aizawa (@aizy_tw) March 25, 2020
世紀末感
泊まっていたグレイマウスに始まり、通過したどの街も、すでにロックダウンが行われているかのように静まり返っていました。
スーパーやガソリンスタンドは開いているけれど、外を出歩いている人はほとんどいません。
まさに、「世紀末」という言葉がピッタリの雰囲気です。
長距離ドライブなので、途中どこかに立ち寄ってトイレ休憩でも、と思っていたのですが、
公衆トイレは全て閉鎖しており、
ガソリンスタンドでもトイレは使用不可にしていました。
つい2日前に満員のイルカツアーを体験したのと同じ国とは思えないほど、急激な変化です。
これは急いだほうがよさそうだと判断し、結局ほぼノンストップで運転しましたが
途中一度だけ車を止めて5分ほどドローンを飛ばしました。
ロックダウンが始まってからは遊ぶ機会はないだろうし、ドローンとも当分お別れです。
募る不安
Bさん宅の隣町まで来たところで、ガソリンスタンドに立ち寄って、給油と休憩をしました。
このタイミングで、Bさんから、僕らのキャンピングカーの設備を詳細に問う内容(シャワーやトイレは付属しているのか?等)のメッセージが来ました。
ここで僕らは、「あー、このタイミングでこれを聞いてくるということは、やっぱり受け入れに消極的になっているんだろうな。」と推しはかりました。
こんな状況で「シャワーを貸してほしい」とか言える空気では無さそうだけど、正直にシャワーが無い旨や、トイレが簡易的なものであるものなどを記載して返信をしました。
数分待っても返事がなかったので、
到着後に「ごめんなさい、やっぱり無理」と言われる最悪の可能性も視野に入れて、
落ち込みながら、重い足取りでBさんのご自宅に向かいました。
一生の恩
到着すると、僕らの予想に反して、Bさんとご主人はとても温かく笑顔で出迎えてくれました。
そして、
「さっき確認したのは、トイレやシャワーが無ければ、プライベートなものを用意しておいてあげようと思って聞いたのよ。」
といい、
僕らを案内してくれました。
僕らのキャピングカーを停めるのは、広い庭の一角。
そして裏口から家の中に入った先にはトイレと、シャワー室がありました。
「ロックダウン中、この裏口と、このトイレとシャワーはあなた達の専用になるわ。家族の分は他にもあるし、こうすることで政府の言う”ISOLATION(隔離)”にも則った形になるからね。」
そして、ご主人は、僕らの車まで伸ばせるホースや、電源を着々と準備してくれていました。
ここまでの待遇は、まったく予想だにしていなかったし、滞在を断られる覚悟すらできていた僕らは、このお二人の温かすぎる対応には、涙が出そうになりました。
お金の話をしようとする僕らに隙も与えず、「何も問題ないし、ウェルカムだから、全然気にしないで。むしろ、家族が帰省したりで部屋が余ってなくて、家の中に泊めてあげられなくてごめんね」
と言ってくれました。
まさに命の恩人です。
Bさんとの出会い
ここで、Bさんについて説明します。
Bさんの正体は、ニュージーランドに入国したその前日、僕らが「幻の1日」と呼んでいる3月13日に、
誤って宿を予約していた家のホスト、バーバラです。
こちらの過失によるキャンセルであったため、「泊まってないんだし、返金するわよ。」というバーバラの有難い申し出は受けず、
1泊分(7,000円)を勉強代として負担していました。
それを気の毒に思ったバーバラ夫妻は、その翌日に僕らを牧場に招いてくれて、カフェもご馳走してくれました。
ロックダウンの知らせを受けた時に、バーバラ夫妻の
「心配する親御さんの気持ちがよくわかるから、何か困ったら私たちに連絡してね。」
という言葉を思い出し、ダメ元で連絡させてもらったのです。
「幻の1日」の存在が、こんな形で報われることとなりました。
バーバラ夫妻の寛大さがあってのことですが、「怪我の功名」をつくづく実感しました。
ニュージーランドで牧場を営む夫婦に、一生レベルの恩ができた。
— Yusuke Aizawa (@aizy_tw) March 25, 2020
ロックダウン
滞在中は、広い牧場内を散歩したり、ソーシャルディスタンスを保ちながらできるお手伝いをさせてもらうことになりました。
ファームステイをしてみたいと思っていた僕らには願ってもないチャンスです。
夕飯は、キャンプ飯が板についてきた奥さんが作ってくれた絶品のリゾット
食事を食べながら、他にどんな形で恩返しができるかなど、二人で話し合ったり
ロックダウン初夜は、明るい気持ちで送ることができました。
しばらく牧場で働いて恩返ししよう。
— Yusuke Aizawa (@aizy_tw) March 25, 2020
しかしこの翌日、僕たちは牧場を去ることになるのです…
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